
半導体洗浄に欠かせない!ウルトラファインバブルの驚きの洗浄力!
半導体製造において、高精度が求められるナノレベルのチップを扱う現場では完璧な洗浄が不可欠です。
その理由はチップに微細な汚れや不純物がわずかでもあると、製品として使えないからです。
ただしこれまでのような強力な化学薬品を使った洗浄では、コスト、手間、環境負荷、装置へのダメージが課題で、続けられなくなっています。
そんなメーカーの悩みを一掃するのが「ウルトラファインバブル」です。
このナノサイズの泡は、驚異的な浸透力と洗浄力で、微細な汚れも徹底的に除去することが可能です。
しかも、環境に優しく、効率的な洗浄を実現します。
今回は、半導体洗浄に欠かせない・ウルトラファインバブルの驚きの洗浄力について、どこよりもわかりやすくご紹介します。
そもそもウルトラファインバブルは「半導体」を洗浄できるのか?
結論、ウルトラファインバブルは半導体を洗浄することが可能です。
ちなみにここでいう半導体とは「シリコンウエハー」のことです。
シリコンウエハーの洗浄において、ウルトラファインバブルは驚異的な効果を発揮します。
なぜなら、ナノサイズの泡は、通常の洗浄液(化学薬品)では、落とせない微細な汚れや不純物を根こそぎはがしてしまい、洗い流してしまうからです。
ウルトラファインバブルは半導体の製造において、持続可能な製造を支援することが可能です。
ウルトラファインバブルとは何か?
ウルトラファインバブルとは、「超微細気泡(ちょうびさいきほう)」のことです。
大きさは「0.000001mm(100万分の1ミリメートル)」しかありません。
このサイズは、通常の光学顕微鏡では捉えられず、電子顕微鏡で数十万倍から百万倍に拡大しなければ見えません。
比較として、タバコの煙の粒子の100nm(0.0001mm)より小さいため、その微細さが際立ちます。
ウルトラファインバブルの潜在能力は、半導体の製造現場に革命をもたらすほどの力を持っています
シリコンウエハーとは何か?
シリコンウエハーとは、半導体チップをつくるための土台のことです。
わかりやすく例えると、シリコンウエハーは「ピザの生地」みたいなものです。
一般的にピザをつくる時には、平らで表面がキレイな生地を用意して、その上にチーズや具材をのせて、美味しいピザができあがります。
シリコンウエハーもピザの生地と理屈は一緒です。
平らで超キレイなシリコンウエハーの円盤の上に、細かい電子回路(半導体のパーツ)をのせて、チップをつくります。
❶シリコンウエハーの見た目
シリコンウエハーの見た目は、鏡みたいにピカピカで、CDやDVDディスクを大きくしたような形をしています。
大きさは、一般的に直径15〜30cmくらいで、厚さは0.5mmくらいで薄いです。
シリコンでウエハーがつくられている理由は、シリコンは電気をほどよく通す性質を持つことから半導体の土台にぴったりなので、シリコンが使われています。
❷シリコンウエハーの役目
シリコンウエハーの役目は、電子回路を載せることです。
シリコンウエハーは半導体チップをつくる「スタート地点」で、ウエハーの上に超細かい電子回路を何層も重ねてチップをつくります。
たとえば、スマホのプロセッサ、 パソコンのメモリ、車の自動運転システムのセンサーなどの「チップ」は全部シリコンウエハーが基になってつくられています。
シリコンウエハーのつくり方
シリコンウエハーは、半導体チップの土台となる薄い円盤で、その製造には精密さが求められます。
こちらではシリコンウエハー製造の具体的な手順についてご紹介します。
❶シリコンを取り出す
砂や石からシリコンを取り出して、純粋な状態にします。
99.9999%以上の純度を目指します。
❷大きな結晶を作る
シリコンを溶かして、棒状の大きな結晶(インゴット)状にして固めます。
巨大なソーセージのような形に成形します。
❸薄く切る
棒状のシリコンを、薄い円盤型にスライスします。
この薄くスライスした1枚1枚がシリコンウエハーの原型です。
❹表目をピカピカに磨く
スライス後、表面を鏡みたいにツルツルに磨きます。
表面を磨いた後に半導体の回路をつくる工場に送られます。
シリコンウエハーにホコリ、汚れ、キズがわずかでもあってはいけない理由
シリコンウエハーは、スマホやパソコンの中核を担う半導体チップの基盤です。
わずかな不純物やキズがあっても製品の品質に深刻な影響を及ぼします。
こちらではシリコンウエハーにホコリ、汚れ、キズがわずかでもあってはいけない理由
について解説します。
❶ホコリがダメな理由
シリコンウエハーにはホコリがわずかでもあってもダメです。
半導体チップには、ナノメートル(1メートルの10億分の1)レベルの超細かい回路が刻まれています。
そのためホコリは、目に見えないほど小さなものであっても、回路にとっては「巨大な岩」のようなものです。
仮に1μm(1mmの1000分の1)のホコリがシリコンウエハーにつくと、回路がショートしたり、電気がうまく流れなくなったりします。
例えると、細い水路に大きな岩が落ちたら、水が流れなくなるのと同じ理屈です。
ホコリは、回路の「水路」をふさいで、チップの動きを邪魔する存在です。
❷汚れがダメな理由
シリコンウエハーには汚れがわずかにあってもダメです。
汚れには、油や有機物、金属の粒子などいろんな汚れがあります。
汚れがシリコンウエハーにつくと、回路の性能が落ちたり、チップが壊れたりする原因です。
金属の汚れが混ざると電気が変なところに流れてショートします。
油汚れは、回路を刻むための「レシピ(プロセス)」がうまく進まなくなる原因です。
例えると、ピザ生地に油やゴミがベッタリついてたら、チーズや具がちゃんとくっつかず、味も見た目も悪くなるのと同じ理屈です。
シリコンウエハーの汚れも同じで、チップの見た目と品質を下げます。
❸キズがダメな理由
シリコンウエハーにはキズがわずかにあってもダメです。
シリコンウエハーの表面は、鏡みたいにツルツルで、ナノレベルでフラットです。
もしキズがあると、回路を刻むときにズレたり、形が崩れたりします。
EUVリソグラフィ(超精密な回路作り)では、1ナノメートルのキズでも、チップの性能に影響が出ます。
キズは、回路の「道」を歪ませたり、電気の流れを邪魔したりする存在です。
例えると 鏡にキズがあると、映った顔が歪んで見えるようなイメージです。
シリコンウエハーのキズも、回路の「設計図」を歪ませて、チップがちゃんと動かなくなる原因になります。
❹なぜわずかなミスでも許さないのか?
半導体チップは、わずかなミスでも許されません。
その理由は半導体チップは小さくて精密につくられており、1つのチップに何十億もの回路がつまっているからです。
たとえ1ナノメートル(1メートルの10億分の1)のミスでも、全体がダメになります。
つまり使い物にならなくなるということです。
半導体工場では、数百もの工程を踏んでチップをつくりますが、シリコンウエハーになんらかのミスがあると、その後どんなに頑張っても挽回することはできません。
そのためシリコンウエハーには一切のホコリや汚れ、キズがあってはいけないのです。
シリコンウエハーの洗浄に化学薬品を使うデメリットとは?
以前、シリコンウエハーの洗浄には強力な化学薬品が使われていました。
ただし化学薬品を使うと、コスト、手間、環境負荷、装置へのダメージなどの点でデメリットが発生します。
こちらではシリコンウエハーの洗浄に化学薬品を使うデメリットについてご紹介します。
❶コストがかかる
シリコンウエハーの洗浄に化学薬品が使われるとコストがかかります。
主なコストは次の通りです。
・化学薬品の購入費用
・洗浄後の薬品の処理費用
・洗浄のための装置の設置、運用費用
・すすぎのための水の使用料
・洗浄装置を動かすための電気の使用料
❷手間がかかる
シリコンウエハーの洗浄には手間がかかります。
主な手間は次の通りです。
・薬品の量、温度、使用時間の管理
・汚れの種類(油、金属、ホコリなど)によって使用する薬品の変更
・すすぎの回数
・洗浄前の準備や片付け
❸環境負荷がかかる
シリコンウエハーの洗浄には環境負荷がかかります。
主な環境負荷は次の通りです。
・洗浄に使った薬品はそのまま下水や川や海には流せない
・シリコンウエハーをすすぐのにキレイな水を大量に使う
・薬品を温めたり、処理したり、超純水をつくる時に大量の電気を使う
❹装置へのダメージがかかる
シリコンウエハーの洗浄には装置へのダメージがかかります。
主な装置へのダメージは次の通りです。
・薬品で洗浄機の部品を傷つける
・薬品の洗浄で傷んだ機械の破片がシリコンウエハーに残ってしまいキズつける
・傷んだ部品を交換したり、機械を修理したりする必要が発生する
なぜ、シリコンウエハーの洗浄にウルトラファインバブルが使われるのか?
現在、シリコンウエハーの洗浄には、ウルトラファインバブルが使われるようになってきました。
そのため化学薬品の使用でありがちだったデメリットはなくなり、さまざまなメリットが誕生しています。
こちらではシリコンウエハーの洗浄にウルトラファインバブルが使われるようになった理由についてご紹介します。
❶ナノレベルの汚れをキャッチできる
ウルトラファインバブルの気泡は、超微細気泡なのでシリコンウエハー表面にある目に見えないホコリや油汚れをしっかりとキャッチすることが可能です。
理由はウルトラファインバブルの気泡は負に帯電していることから、正に帯電している汚れを吸着する効果があるからです。
さらに、気泡がパチンとはじける時に小さな衝撃波が起こり、頑固な汚れを粉々に破壊することができます。
普通の洗剤や水だと、小さな汚れは取れにくいですが、ウルトラファインバブルだとナノレベルの汚れにも対応することが可能です。
ウルトラファインバブルは、シリコンウエハーの「ナノサイズの汚れ」をピンポイントで取り除いてくれます。
❷シリコンウエハーをキズつけずに洗える
ウルトラファインバブルの気泡は、シリコンウエハーをキズつけずに洗うことが可能です。
シリコンウエハーの表面は鏡みたいにツルツルです。
なぜならキズが1つでもあると、半導体チップが壊れる原因になるからです。
もし強い洗剤やブラシでゴシゴシ洗ってしまうと、表面にキズがつくリスクがあります。
ところがウルトラファインバブルは水と気泡だけで優しく洗うことから、シリコンウエハーにまったくキズをつけることがありません。
また気泡の小さな衝撃波が、汚れだけをポロッと取るので、ピカピカな表面をキープできます。
❸全体をムラなくキレイに洗うことができる
ウルトラファインバブルの気泡は、全体をムラなくキレイに洗うことが可能です。
シリコンウエハーは、表面全体が均等にキレイじゃないと、チップの性能にムラが出ます。
ウルトラファインバブルは水の中で均一に広がり、ウエハーの隅から隅までしっかり洗えます。
細かい溝やパターンにも気泡が入り込んで、ムラなく汚れを取ってくれます。
現在、半導体の回路はどんどん小さくなっているため、細かいところまで洗える技術が求められており、それに応えられるのがウルトラファインバブルです。
ウルトラファインバブルには半導体洗浄効果がある理由
こちらではウルトラファインバブルには半導体洗浄効果がある理由について解説します。
ウルトラファインバブルは次の3つの効果があることから半導体を洗浄することができます。
❶マイナス帯電効果
マイナス帯電効果とは、ウルトラファインバブルの気泡表面が負電荷を帯びる状態のことです。
これにより正電荷を帯びた汚れを吸着します。
❷ジャッキアップ効果
ジャッキアップ効果とは、ウルトラファインバブルの気泡が、シリコンウエハーと汚れのすき間に入り込み、車のジャッキアップの要領で汚れを浮かび上がらせる効果のことです。
これにより汚れの原因物質をシリコンウエハーから浮かび上がらせ流しやすくします。
❸衝撃圧力効果
衝撃圧力効果とは、ウルトラファインバブルの気泡が破裂することで、汚れの原因物質を粉々に破壊する効果のことです。
これにより水中に漂っている汚れは、30気圧の強い圧力がかかり消滅します。
家庭で簡単にウルトラファインバブルを使うには?
家庭でも簡単にウルトラファインバブルを活用して、さまざまなものを薬品を使わずに洗浄することができます。
やり方は「ウルトラファインバブル生成ノズル」を家庭の水道管につなぎ蛇口をひねるだけです。
たったこれだけでウルトラファインバブル水がつくれ、薬品洗浄とは無縁の生活を送ることができます。
まとめ
今回は、半導体洗浄に欠かせない・ウルトラファインバブルの驚きの洗浄力についてご紹介しました。
以前の半導体の洗浄には強力な化学薬品が使われていました。
ところがさまざまなデメリットが発生することから、水と空気で簡単につくれて地球にも優しいウルトラファインバブルが選ばれるようになりました。
ウルトラファインバブルの採用で、日本の半導体の製造は今後大きく飛躍することでしょう。